日々、訪問看護

40代訪問看護師(非常勤)です。仕事のことを中心につらつらと書いています。

在宅の多職種連携は難しい。だからこそコミュニケーションは大切です

在宅ケアに関わる職種はとても多いです。 

医師、ケアマネージャー、セラピスト(PT、OT、ST)ヘルパー、デイサービスやショートステイなどの施設スタッフ、福祉用具、そして私たち訪問看護師。これほどにたくさんの職種がひとりの利用者さんを担当するのですから、連携は必須です。 

ところが、「利用者さんのためにより良い多職種連携を!」なんて簡単にはいかないのが現実なのです。

 

相手の立場を考えたコミュニケーションで、多職種連携はうまくいく

介護保険制度では利用者さんごとにケアマネージャーさんがいて、介護度に合わせて必要なサービスを考えてくれます。(ケアプランの作成)

利用者さんと相談しながら、生活面のサポートが必要ならば訪問介護(ヘルパーさん)を依頼して、車いすや電動ベッドが必要ならば福祉用具を手配して…。

そのなかで医療面のサポートが必要な利用者さんの場合、私たち訪問看護師のいるステーションへ依頼が来るのです。

つまりケアマネさんが、利用者さんに関わるスタッフ全体のまとめ役ということになります。

 

他職種を理解しよう 

在宅においては、自分以外の職種の立場や考えを尊重して関わることはとても大切です。 

私の体験談 

私が訪問看護師になって間もないころの話です。

ある利用者さんのケアについて、ヘルパーさん、PTさんと統一したい ことがありました。

私はヘルパーさんとPTさんに声をかけて話し合いを持ち、その結果を翌日ケアマネさんに報告しました。

 

その際、ケアマネさんに強い口調で注意を受けました。

プランを作っているのは自分なのだから、すべて自分を通すようにとおっしゃるのです。

自分がリーダーかのような、 勝手な行動をしないで欲しいとも。

 

現場では至急意思の統一を図らねばならないこともあります。

話し合いをしたことについては、間違っていたとは思いません。

しかし「直接ケアマネさんが関わることではないから、事後報告で良いだろう」と判断したのは間違いだったと思います。

まずケアマネさんに「○○さんのことでヘルパーさんとPTさんに相談したい」と伝えるべきでした。

 

自分だけが頑張ってもチームは機能しない 

誰が偉いとかいうことではなく、私たちはケアマネさんをリーダーとしたチームであることを 忘れてはいけないと思うのです。

情報がごく自然にケアマネさんに集まり、全体で共有できる関係性があってはじめてチームが機能するのではないでしょうか。

 

医療職だとか、介護職だとか。

資格があるとか、ないとか。

そんなことは関係ないのです。

 

とはいえ残念なことに、医療職である看護師がチームワークを乱すことは案外多いようです。

医療職であるというプライドが故に断定的な言い方になってしまったり、上位に立とうとしたり…。

 

チームワークを重んじることのできないスタッフがいたら「在宅ケアが分かっていない」のだと考えましょう。

在宅ケアに関わる職種はすべてその分野のプロフェッショナルです。

例えば私がリハビリテーションを行っても、PTが行うほどの効果は期待できないでしょう。

受けてきた教育や経験値が違うのですから 当然です。

一人だけが頑張っても、利用者さんの生活を含めた全体を支えるには足りません。

さまざまな立場のさまざまな考えを寄せ集めて、目標を決めていくのです。

  

対立する意見や判断の基盤になっている価値を理解しようとすることで、自分とは異なる価値観や様々な考え方を知ることができる。

引用元:多職種連携と倫理 | 日本看護協会

 

相手の背景を想像できて、なおかつ尊重できる人間になりたいものです。

 

目標を共有する 

”自宅でどう過ごしたいか”は、利用者さんだけでなくチームの目標であり、メンバー全員で共有しなければなりません。 

アドバンス・ケア・プランニングの普及  

○終末期の医療をどうするか。(リビング・ウィル

○本人に代わって意思決定する人を決めておく。(代理人指定)

自ら意思決定ができなくなる前に、上記のような事前指示書(アドバンス・ディレクティブ:ADs)を残すことがあります。

通常ADsは個人で作成するものです。

これを患者さん(利用者さん)が、ご家族、医療や介護のスタッフとともに話し合うことをアドバンス・ケア・プランニング(ACP)と言います。

ACPではADsだけではなく、病気が悪化したらどうするかなど近い将来のことも含めて話し合います。

欧米では健康な人にもACPは必要とされていることから、本来は、自身の今後のことを常に周囲の人と話し合っておこうと言う意味なのかもしれませんね。

ACPを医療分野でしか重要視していなかった日本でも、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を2018年に「医療、ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に改訂し、在宅医療・介護現場でも活用できるような見直しを行いました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197665.html

 

選択肢が広く、関わる職種が多い在宅でこそ、ACPは普及されるべきです。

関わるスタッフ全員が利用者さんの希望を知らなければ、同じ目標に向かうことはできないのですから。

 

自ら行動しよう 

違う事業所に所属するスタッフとのコミュニケーションは少し緊張します。

忙しい時間に電話してしまったら?

メールやFAXで伝えたことがうまく伝わらなかったら?

そもそもメールやFAXは、誤送信を考えると最小限にしたいというジレンマもあります。 

こうしてコミュニケーションツールは少なくなり、相手とは距離ができてしまいます。

 

それでも自ら行動しましょう。

電話は、必ず相手の都合を確認してから本題に入ること。

お忙しいようなら自身の都合の良い時間をいくつか伝え、相手からの連絡を待ちます。

連絡ノートを利用者さん宅に置かせてもらうのも1つのコミュニケーションです。

利用者さんやご家族も一緒に利用してくださることがよくありますよ。

また、短時間で伝わるようにコミュニケーションスキルを磨くことも大切ですね。

 

多職種連携のカギはコミュニケーション

普段から円滑なコミュニケーションをとれているケースでは、チームが目標を共有し、協働できていると感じます。

それぞれが専門性を発揮しつつ、お互いを認めあえる関係性が築ければ他職種連携はうまくいくのです。

他職種を理解するため、自身を知ってもらうためにもコミュニケーション能力を高めていきたいですね。