日々、訪問看護

40代訪問看護師(非常勤)です。仕事のことを中心につらつらと書いています。

訪問看護ステーションからのリハビリテーション

訪問看護ステーションにはどんな職種が働いているかご存知ですか。

私は、訪問”看護”という名称のイメージから、ステーションで働いているのは看護師だけだと思っていました。

 

訪問看護ステーションでは看護師のほかに理学療法士作業療法士言語聴覚士などのリハビリ職も働いています。

ただし、訪問看護ステーションからのリハビリテーションには少し変わった位置付けがされているのです。

 

訪問看護ステーションからのリハビリテーションは”訪問看護の一環”である

 

介護保険制度では訪問看護ステーションからのリハビリテーションは「訪問看護」と位置付けられています。

リハビリだけど看護。ちょっと分かりにくいですね。

 

 

在宅リハビリテーション

リハビリテーションと聞くと、入院中に機能回復室で行うものを想像すると思いますが、在宅でもリハビリテーションは行われています。

 

在宅リハビリテーションの目的

在宅でのリハビリテーションは、介護保険制度の理念でもある「自立した生活」が営めることを目的としています。

「自立した」といっても、ひたすら機能回復を目指すのではありません。

障害があっても、介護サービスを利用しながらでも良いので、利用者さんのご状態に合わせて自立を目指していくのです。

 

もう一つの目的は「介護量を減らす」ということ。

利用者さんの生活と同じくらい、ご家族の生活だって大切です。

利用者さんが自力でできることを増やすと同時に、どうすればご家族の介護負担が減るかも考えていかねばなりません。

 

例えば、見守りがあればなんとか杖で歩ける方がいたとします。

でもそれは、昼夜問わず必ず誰かがそばにいなければならないということです。

介護者への負担が大きくなってしまうのは簡単に想像できますよね。

ならば基本的には車いすでの自走を目指そう、休日などご家族に余裕のある時は杖歩行もしてもらおう、それならば歩くための筋力も維持しよう、などと考えていくのです。

利用者さんとご家族、どちらの意見も聞きつつ一緒に着地点を決めていくという感じでしょうか。

 

在宅リハビリテーションの種類 

在宅リハビリテーションには以下の2種類があります。

  

○訪問リハビリテーション

病院や診療所、介護老人保健施設理学療法士等が利用者さんの自宅を訪問して行う。

訪問看護ステーションからのリハビリテーション

訪問看護ステーションの理学療法士等が利用者さんの自宅を訪問して行う。

 

どちらもリハビリ職が行うリハビリテーションであり、内容にも大きな違いはありません。

しかし、訪問リハビリテーションからのリハビリテーションは「リハビリ」、訪問看護ステーションからのリハビリは「訪問看護」となっています。

なぜなのでしょうか。

 

リハビリ職が訪問看護ステーションでリハビリテーションをするようになった背景

日本は世界的にもまれにみる長寿国家です。

2025年問題、2040年問題からも分かるように、今後さらに高齢化は加速していくでしょう。

 

驚くことに後期高齢者の医療費は現在、全体の約40%を占めています。*1

後期高齢者は複数の慢性疾患を持っていることが多く、ちょっとしたことで悪化してしまい、回復も遅いのですから当然のことかもしれませんね。

後期高齢者の医療費の上昇を抑えるためにも、病状の落ち着いている方はなるべく地域で対応しよう、さらには、できるだけご自宅で過ごせるように介護状態にしない対策(介護予防)もして行こう、というのが最近の介護保険制度の動向です。

 

訪問リハビリテーションだけでは在宅リハの受け皿が足りない

地域に高齢者が増えるということは、訪問看護やリハビリ、ヘルパーなど介護の担い手も増やさなければならないということです。

「自立した生活」を長く続けるため、「介護状態にならない」ためには、運動=リハビリテーションが重要です。

ところが、訪問リハビリテーションはその病院の患者さんの退院後をサポートする形が多いうえ、そもそも数が足りません。

そこで足りない分を訪問看護でカバーしようということになったのです。

 

在宅ではもともと、訪問看護師が関節拘縮予防などのリハビリも行っていました。

この「看護師が行っていたリハビリ」の部分をリハビリ職に任せようというのが、訪問看護ステーションで理学療法士等がリハビリを行うようになった背景です。 

そのため、位置付けとしては看護業務の一部をリハビリ職に任せているという形になっているのです。

理学療法士作業療法士又は言語聴覚士による訪問看護は、その訪問が看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心としたものである場合に、看護職員の代わりに訪問させるという位置付けのものである。            

                                       引用元:厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000080856.pdf

ちなみに、訪問リハビリテーションには看護師の人員基準はありませんし(看護師を配置しなくても良い)、訪問看護ステーションには理学療法士等の人員基準はありません。(理学療法士等を配置しなくても良い)

だから訪問看護ステーションによってスタッフが看護師だけだったり、リハビリ職も働いていたりするのです。 

 

訪問看護ステーションでの看護師とリハビリ職の連携のこと

今回は訪問看護ステーションからのリハビリテーションがなぜ「看護の一環」なのか、についてお話しました。

お若い看護師さん、リハさんはこのあたりの背景がよく分からなかったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

2018年の介護保険制度改正、介護報酬改定では訪問看護ステーションからのリハビリについて、看護との連携の面で改正点が示されました。

この改正の意味や、訪問看護ステーションにおける看護とリハの連携にまつわる問題や今後の課題などは、また近いうちに書いてみたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

*1:厚生労働省 平成28年度医療費の動向