訪問看護師の働くフィールドは地域ー在宅療養を支える訪問看護師という働きかたー
私は訪問看護師です。
訪問看護師をしていると言うと、
「お年寄りの介護をしているの?」
と聞かれることがよくあります。
高齢者介護は訪問看護の重要な要素なので間違いではありませんが、ほんの一部分であって、実際には訪問看護師の仕事はもっと多様です。
超高齢化社会の日本において、訪問看護師の人材確保が叫ばれていますが、世間からの認知はまだまだ不足しています。
訪問看護師は看護師全体の3%ほどなので、仕方がないのかもしれませんね。
今日は、訪問看護に少しでも興味を持っていただけるよう、私の仕事についてお話してみたいと思います。
訪問看護師は在宅療養を支えている
疾患を抱えながら自宅で暮らす方、障害はあるけれど入院対象ではない方、最期の時間を自宅で過ごしたい方…。
訪問看護師は、さまざまな理由で支援を必要とする方とともに活動しています。
訪問看護師の働く場所
看護師の就業場所は?と聞かれたら、
○病院
○診療所(クリニック)
○介護施設
○学校
などが思い浮かぶのではないでしょうか。
病院や介護施設では、患者さんや高齢者の方々が施設にやってきて、その施設のなかで看護師がケアにあたります。
施設の外で働く看護師
私の就業場所も「訪問看護ステーション」という施設です。
でも、実際に働く場所は利用者さんのご自宅です。
訪問看護では、その方に病気や障害があっても患者さんとは呼びません。
訪問看護サービスを利用される方という意味で、利用者さんとお呼びします。
利用者さんは、地域に住んでいて支援を必要とする方ならば、赤ちゃんから高齢者まですべての方々が対象です。
住み慣れた地域(ご自宅)で暮らす利用者さんを支える訪問看護師は、地域で働く看護師なのです。
訪問看護師の仕事に特別なスキルはいらない
基本的な仕事内容は、病院や診療所で働く看護師と同じです。
訪問したらバイタルサインの測定、食事量や排泄などの健康状態をチェックして、利用者さんに合わせたケアを行うといった流れです。
看護師のスキルがあれば、特別なものは必要ありません。
ご自宅ですから、大きな検査や手術は行われません。
指示があった場合は点滴も行いますが、継続した治療が必要ならば入院になることが多いです。
最新の検査や治療を知っていたい、医療の最前線で働きたいという気持ちがある方には、訪問看護はまだ少し早いかもしれませんね。
私も以前は在宅に全く興味がありませんでした。
ICUで働いていた私は
「バルパンが~」
「SAHのオペ患が~」
なんて恰好つけて言いつつ、頑張って働いて、結構充実していました。
外科病棟で働いていたとき、私が担当していた患者さんで壮絶な戦いの末に回復して退院された方がいました。
退院後も医療処置が必要だったので、訪問看護に引き継いだのですが、退院していく姿を見送っていて突然「訪問看護師になりたい!」と思ってしまい…。
うまく言えませんが、支援が必要な状態で退院していく患者さんはこれからが本番なんだ、と感じたんですね。
その後、父の介護を通してその気持ちはさらに強くなり、現在に至っています。
忙しい職場でなければ物足りなかった私が、訪問看護師になったのですから不思議なものです。
自ら学ぼうとしなければ知識不足になる
訪問看護師になって、ややこしい検査や治療がなくなって楽になったかと言えばそうでもありません。
病院にいた頃のように、黙っていても新しい情報が入ってくることはないので、訪問看護に必要な知識は自ら学ぶ姿勢が大切です。
訪問看護がしてみたいなと思っている看護師さん。
訪問看護ステーションを選ぶときにはぜひ、学べる環境が整っているかを確認してくださいね。
(研修制度があるか、症例の振り返りや勉強会を定期的に行っているか、外部研修に参加できるかなど)
訪問看護師の役割
訪問看護師の役割として特徴的だと思うことが2つあります。
維持と予防
利用者さんがご自宅で生活するためには、病状の安定が欠かせません。
病状の安定を維持するためには、確実な服薬や規則正しい生活が大切です。
だからこそ、利用者さんや介護にあたるご家族への指導は大変重要になります。
入院していれば周囲には24時間医師や看護師がいますが、ご自宅では利用者さんおひとり、またはご家族しかいないのです。
在宅では、看護師だけが頑張っても意味がありません。
利用者さんとご家族だけの時間も適切に対応できるよう、何に注意すればよいか、受診のタイミングは?などをあらかじめ話し合っておきます。
指導というよりも、戦略会議ですね。
ご家族との関係性は、他の職場で働いていたときよりも密接です。
同様に予防も大切だと考えています。
例えば、褥瘡のできやすい利用者さんには皮膚の保湿やケア方法の統一、エアマットの使用や体位の工夫を、誤嚥性肺炎を起こしやすい利用者さんには嚥下体操や食事形態の工夫、食事の際の見守りと声かけなどを行っています。
排痰ケアは今のほうが自信がありますね。
在宅では主体となって治療を行わないからこそ、維持や予防は私たちにとって重要なミッションなのです。
多職種との連携
どこで働いていても他職種との関わりは少なからずあるものですが、訪問看護師は特に多いといえます。
1日1回も他職種と関わらない日はない、といって過言ではありません。
医師
ケアマネージャー
他の訪問看護ステーションスタッフ
リハビリスタッフ
デイサービスやショートステイなどの施設職員
ヘルパー
在宅では利用者さんおひとりに対し、さまざまな職種が関わっていることがあります。
それぞれの職種は自らの役割を果たしつつ、さらにチームとして協働しなければなりません。
違う事業所に所属するスタッフが集まるチームだからこそ、よりよい関係性を築くために、コミュニケーションは必須です。
コミュニケーションスキルに自信がない、という方も大丈夫です。
どうしても伝えなくてはならない事象があるたびにスキルは磨かれていきます。
他職種とのコミュニケーションが苦手だった私も、今では多職種と関わることのできる訪問看護師という仕事が楽しいと感じています。
訪問看護師になりたい方、お待ちしております
利用者さんやご家族がより身近になる訪問看護師という仕事。
医療の最先端に関わることはなくても、色々な立場、職種の人たちと影響しあいながら成長できる仕事です。
訪問看護師っていいかも、と思っていただければ嬉しいです。